元祖たこやき

ノベルゲーム(R-18含む)を淡々とレビューします。

ノベルゲームの入門書~ATRI-My Dear Moments-レビュー~

 

  • ゲーム概要

ATRI-My Dear Moments-(ANIPLEX.EXE、Frontwing、枕・2020年発売)

脚本:紺野アスタ(Frontwing)

原画:ゆさの・基4

プレイ時間:9時間

価格:2,000円+税

 

ATRI -My Dear Moments-

 

 

  • あらすじ

原因不明の海面上昇によって、地表の多くが海に沈んだ近未来。
幼い頃の事故によって片足を失った少年・斑鳩夏生(いかるが なつき)は、
都市での暮らしに見切りを付け、海辺の田舎町へと移り住んだ。

身よりのない彼に遺されたのは、
海洋地質学者だった祖母の船と潜水艇、そして借金。

夏生は“失った未来”を取り戻すため、謎の借金取り・キャサリンと共に、
祖母の遺産が眠るという海底の倉庫を目指して潜る。

そこで見つけたのは、
棺のような装置の中で眠る不思議な少女――アトリ。

彼女は、人間と見紛うほどに精巧で感情豊かなロボットだった。
海底からサルベージされたアトリは言う。

「マスターが残した最後の命令を果たしたいんです。
 それまで、わたしが夏生さんの足になります!」

海に沈みゆく穏やかな町で、
少年とロボットの少女の、忘れられない夏が始まる――。
(公式サイトより)

 

atri-mdm.com

  • 評価(1~2とても悪い・3~4悪い・5~6普通・7~8良い・9~10とても良い)

原画・CG:7

シナリオ :7

BGM        :6

音声      :8

システム :6

総合評価 :7

  • 感想(ゲーム全体について)

 あのFrontwingと枕が共同で手掛けたノベルゲーム「ATRI-My Dear Moments-」

初めてノベルゲームをしたいんだけど、どれがいい?と聞かれれば迷わずこれを挙げるような作品。価格も非常に安く、ボリュームもそれほどない。また、ノベルゲームをやってみたいけど高くて手が出ない、いつも話が長くて途中でだれるといった人にもお勧めできるまさにノベルゲームの入門書とでもいうべき作品だ。これをプレイすればノベルゲームというのがどういうものかを大まかにつかむことができるだろう。

 

 キャラクターCG

 普通のノベルゲームといった感じでいろいろな髪色のキャラクターがいる。透明で澄んでいるような絵柄で顔は全体的に幼めに描かれており、それがいい意味でも悪い意味でも親しみやすさを感じる。キャラデザインは非常によく、キャラクター皆がデザインと性格がマッチしている。

 

 BGM

 可もなく不可もなくといった感じ。特に印象に残るBGMはなかったが、かといってゲームの世界観を壊すものでもなかった。徹底的に脇役に回っているためもう少しBGMが主張しても良かったと思う。

 

 シナリオ

 値段相応のボリュームといった感じでシリアスもギャグも程よくちりばめられている。発電システムやタービンなど専門的なことも分かりやすく説明されていて文系の自分にもすんなり理解できた。また、アトリがアンドロイドであるということを忘れそうなときに、しっかりとアトリはアンドロイドであると再確認させるようなシーンを入れてくるので世界観や設定を最後まで意識できたことも良かった。

 

 音声

 アトリと凜々花が子供特有のウザさをちょうど不快にならない程度に落とし込んでいたのがよかった。そして、竜司の兄貴肌な声質が最高に良かった。さすが団長とおんなじ声優さんって感じ。

 

 システム

 可もなく不可もなく普通のギャルゲーのシステムと変わらず。ただ、何かを操作するたびにアトリがしゃべってくれるのが良い。これはすべてのノベルゲームで導入されるべきシステムではないだろうか。

 

 ~~~~~~~~~~~ネタバレ注意~~~~~~~~~~~~~

















 

 

 

 

 

 

  • 感想(ルート別)

 GOOD END

 非常に良かった。アトリの過去や主人公の母親の話、そして最後にアトリと別れるシーンまですべてがきれいにまとまっていた。特に最後にアトリを救うのではなく、1日だけ寿命を残してスリープさせるシーンはただ単純にアトリを救うよりも儚く、寂しく、しかしどこか達成感を覚えるエンディングに仕上がっている。これからアトリを失った主人公はどうなるのか、アトリは最後には救われたのだろうか、そんな想像を楽しめるエンディングだった。

 

 BAD END

 BAD ENDに関していえばあれは完全に蛇足であるだろう。ボリュームを増やしたかったのかルート分岐を入れなければいけなかったのかは知らないが、あれのせいで今後どれだけアトリが良いように書かれたとしても人を殺した殺戮マシーンにしか見えなくなる。ライターが年寄りに個人的な恨みがあったのかは知らないが、あそこまでぼこぼこにする必要はなかっただろう。しかもアトリが自分で自殺はできないとか言っておきながら、学校の屋上から飛び降りる始末。これじゃほんとにポンコツロボットじゃないか…(差別禁止法違反)

ともかくBAD ENDをなくしてGOOD END1本にしたほうがよかっただろうことは確かである。

 

 TRUE END

 TRUE ENDに関しても、別になくても良かったと思う。もちろんTRUE ENDで最後にはアトリと主人公、その他のキャラクターが報われたことを知れたのは良かったのだが、そのせいでGOOD ENDのラストシーンの感動が薄れてしまうように感じる。昔読んだ評論にミロのヴィーナスは腕がないからこそ欠けている美しさがある。その腕を直してしまったが最後ミロのヴィーナスの美しさはなくなってしまう。みたいなことが書かれてあったが本当にその通りだと思う。

 

 とはいえ、GOOD ENDの出来が素晴らしかったことに変わりはなく、価格、ボリュームも非常にとっつきやすいものとなっていたので、これからのANIPLEX.EXEの作品に期待である。