これはゲームであってゲームでない~君と彼女と彼女の恋 レビュー~
- ゲーム概要
君と彼女と彼女の恋(ニトロプラス・2013年発売)
脚本:下倉バイオ
原画:津路参汰
プレイ時間:30時間ほど
価格:初回限定版、通常版…7,500円+税
ダウンロード版 …6,500円+税
- あらすじ
まるでモブのように無個性な主人公・心一。学園のヒロイン・美雪とは幼馴染みだが、目立ちたくないがために声をかけることもなく、ただのクラスメイトの1人として、平凡な日々を過ごしていた。そんなある日、親友の雄太郎に呼び出され向かった屋上で出会ったのは、クラスで浮いている電波少女・アオイ。「ビリビリ、するの?」そんな言葉とともに、突然キスを迫られた心一。偶然居合わせた美雪に助けられ、なんとかその場は切り抜けたが、それ以後アオイに奇妙につきまとわれるようになる。
友達もなく、人間らしい感情を持たないアオイ。彼女に友達との付き合い方を教えてやりたくて、意を決して美雪に頼み込み、3人で時間を過ごすことに。日が経つにつれ、徐々に人間らしい感情に目覚めていくアオイ。一方美雪も、幼い頃無理矢理押さえ込んでいた心一への想いが蘇り、徐々に主人公との距離を詰めていく。せっかく友達同士になれたのに、日に日にギクシャクしていく3人の関係。
(公式サイトより)
- 評価(1~2とても悪い・3~4悪い・5~6普通・7~8良い・9~10とても良い)
原画・CG:8
シナリオ :9
BGM :10
音声 :8
システム :7
総合評価 :9
- 感想(ゲーム全体について)
1番印象に残るエロゲってなに?と聞かれれば迷わずこのゲームを挙げるだろう。
まず初めにこのゲームを買うか否かについてだが、正直言って買うべきだと思う。
このゲームはエロゲ界の異端児であり、革命であり、エロゲの概念を打ち壊す作品だ。
思えば不思議ではないだろうか。1週目で付き合ったヒロインは2週目になると友達で、1週目に主人公と付き合った記憶もなくなっている。1週目のヒロインの気持ちはどこへ行ったのか、彼女の気持ちは偽物だったのか、それで彼女は報われるのだろうか。そんな設定をゲームだからで終わらせてしまっていいのだろうか。そんな疑問をエロゲ界に投げかけた作品である。
キャラクターCGはノベルゲームやエロゲによくあるギラギラな配色でのっぺりとしたイラストではなく、爽やかで少しモノトーンというかいわゆる萌え絵というよりは漫画チックなイラストとなっている。黒髪キャラも多く、黒髪でないアオイやハルも色合いが下品でないので舞台が高校といわれてもまぁこれくらい染めてる高校生はいるよなと納得できるレベルに仕上がっている。
BGMはリストの愛の夢3番をはじめとして非常に重く、クラシックな感じの曲が多く、特にエリック・サティの影響を受けているなと感じることが多かった。しかしそれがキャラクターの絵柄やシナリオの雰囲気、このゲームの世界観とマッチしており、不安だが心地の良い独特の雰囲気を醸し出していた。
シナリオは非常に簡素な洗礼された流れとなっていて、途中でだれることなく読み切ることができる。話の流れにも特にこれといった違和感はなく心地よく終えることができた。ギャグシーンに関していえば、ギャグ担当がエロゲにありがちな女の子が下品な下ネタを言うある意味男が思う理想的な女友達、ではなく全力で真剣に、けれども聞いてる側からすると笑えるようなことをいってくれる男友達なので、恋愛シーンとギャグシーンの緩急がしっかりしていたので飽きることなく楽しめるのも良かった。
音声は美雪の迫真の演技とアオイの気だるげな演技、その両方がキャラにマッチしていた。(アオイの神様への交信シーンでドッピオを思い出してしまった人は他にもいるはず…)
システムはゲーム内に関していえばほぼ完ぺき。バックログから指定のシーンまで戻れないのは少し残念だったが、それも些細な問題に過ぎない。
問題はゲーム外のシステムで、まずこのゲームをPCを変えたからやり直そうとしてもパッケージを捨ててしまったので認証コードがない。認証コードがないとゲームをインストールしても起動できないので詰む。調べたところこのゲームはソフト電池を使用してるらしいので、ソフト電池を新しいPCに移し替えてやっと起動できた。
そしてやっとゲームの終盤、最高の盛り上がりというところでゲームのパッケージに書いてる番号(認証コードとは別)が必要だといわれる。詰んだ。結局ネットで検索しまくったら親切な人が番号を書いててくれたので攻略できた。割れ対策とはいえ(たとえパッケージを捨ててしまったことが悪いとわかっていても)正規品を買ったのに何でこんな思いをしなければならないんだともしも神がいるのならば問いたい。
- 感想(個別ルート~エンディング)
~~~~~~~~~~~ネタバレ注意~~~~~~~~~~~~~
1週目は共通で美雪、感想は特にない。美雪かわいい。
2週目も美雪を攻略したかったが、アオイを攻略しないと先に進めないのでアオイを攻略。アオイルートの時に美雪が何回も永遠の愛を信じるかどうかを聞いてきたのがいい伏線になっていた。そして心一とアオイが仲直り()した後の美雪の撲殺シーン。白ワンピに返り血の赤が非常に映えて、その瞬間私は美雪に心奪われた。それ以降のメタルートは幸せのひと時だった。もちろん1万回好きもいったし同じシーンを何度も繰り返した。メタルート2週目はあえて美雪の好感度を下げてみた。美雪が泣きながら心一を殺すシーンは忘れられない。”高潔な女 服従欲を煽る女 一方で嗜虐心を煽る女 花に例えると…うんまあちょっとおもいつかないけど”それが曽根美雪なのだ。
最後の選択はアオイを選ぶ気にはなれなかった。もちろんアオイも素敵なキャラクターで、ほかの世界ではこんな気持ちはなかったけど今は心一が好きというシーンは思わずきゅんとしてしまったわけだが。こんなにも自分を、プレイヤーの意志で動かされている心一ではなく画面の向こうの自分を愛してくれているといっているのにそれに応えないのは男じゃないと思い美雪を選んだ。アオイが消えることに抵抗はあったが不思議と後悔はなかった。自分でゲームの中の主人公でなくプレーヤーである自分の意志で選択することができたから。きっと記憶をなくしてもう一度プレイしても美雪を選ぶだろう。
これはゲームであってゲームでないと題名につけたが、その通りだろう。これは他のゲームとは違って一度選択してしまったら二度と後戻りはできないのだから。現実世界と同じく何かを失ってしまうとしても、決断をしなければならないのだから。もちろんゲーム位気軽にさせろという人もいるだろうが、逆に言えばゲームだからこそ、来たる人生の分かれ道で選択する責任の重さや重要さを前もって教えてくれるのではないだろうか。
もう1つこのゲームが教えてくれた大切なことがある。
それはパッケージを捨ててはいけないということだ。